ADMEのM(代謝)を徹底解説!
薬を服用したあと、その薬はずっと体の中に残っているわけではありません。
体内に取り込まれた薬は、
→ 吸収(Absorption)
→ 分布(Distribution)
→ 代謝(Metabolism)
→ 排泄(Excretion)
という流れをたどります。
この4つの頭文字をとったものが、薬物動態で重要となるADME(アドメ)です。
前回の記事では、ADMEのうち
A:吸収(Absorption)
D:分布(Distribution)
について解説しました。

まだ読んでいない方は、先に吸収・分布編を読んでもらうと、薬が体の中をどのように移動していくのかがより理解しやすくなります。
今回はその続きとして、
M:代謝(Metabolism)
について解説していきます。
「代謝」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、まずは、
代謝=薬を体の外へ出しやすい形に変える過程
とイメージしてみてください。
イブしろちょっとイメージ難しいですよね。
なので図にしてみました!!


多くの薬では、肝臓などで代謝されたあと、腎臓などを通して体外へ排泄されます。
この仕組みを理解すると、
「肝機能や腎機能が低下すると、なぜ薬の効き方が変わるのか?」
までつながって理解できるようになります。
今回は、看護学生さんが薬理学や国家試験を勉強するときに押さえておきたいポイントを中心に、できるだけシンプルに解説していきます。
代謝(Metabolism)とは?
まず結論
薬物の代謝とは、体内に入った薬の化学構造を変化させ、体外へ排泄しやすい形などに変える過程です。



…つまりどういうことですか?よくわかりません。



つまり多くの薬は、代謝によって体の外に出やすい形になるんだよ!
薬物代謝の中心となる臓器は肝臓です。
薬には脂に溶けやすい「脂溶性」のものが多くあります。しかし脂溶性のままでは腎臓から尿中へ排泄されにくい薬もあります。
そこで体は、薬を代謝することで、より水に溶けやすい形に変化させ、排泄しやすくします。
ただし、ここで一つ注意です。
代謝=必ず薬を無効にすること
ではありません。
代謝によって作用が弱くなる薬もありますが、代謝されたあとも作用を持つものや、代謝されて初めて作用を発揮するプロドラッグもあります。


よく見かけるプロドラッグ(例)
- レボドパ
- テガフール
- ロキソニン
第Ⅰ相反応と第Ⅱ相反応
薬物代謝は、大きく第Ⅰ相反応と第Ⅱ相反応に分類されます。
第Ⅰ相反応とは?
第Ⅰ相反応では、薬物の構造に変化を加えます。
代表的な反応には、酸化・還元・加水分解があります。
特に重要なのが、薬物代謝酵素のCYP(シトクロムP450)です。
CYPは多くの薬の酸化反応に関わっています。



ここで登場する「CYP:シップ(シトクロムP450)」は今後の薬理学でもよく出てくるので必ず覚えてください!!



名前が独特すぎて覚えられないかも。。



この後でCYPの紹介文があるのでそこで特徴を掴んでください。わかりやすく記載するよう努力します!
第Ⅱ相反応とは?
第Ⅱ相反応では、薬物などに別の物質を結合させる抱合反応が中心になります。
代表例として、グルクロン酸抱合などがあります。
第Ⅱ相反応によって水溶性が高まり、体外へ排泄されやすくなる場合があります。
ただし、必ず第Ⅰ相反応のあとに第Ⅱ相反応が起こるわけではありません。
第Ⅱ相反応を直接受ける薬物もあります。また、第Ⅰ相反応によって必ず水溶性が高くなるとも限りません。


看護でなぜ「代謝」が重要?
薬物代謝の中心となる臓器は肝臓です。
肝臓の機能が低下すると、薬の種類によっては代謝が遅くなり、体内に薬が残りやすくなることがあります。
その結果、
- 薬の作用が長く続く
- 薬の血中濃度が上昇する
- 副作用が出やすくなる
といった影響が現れる可能性があります。
例えば、肝機能が低下している患者さんでは、肝臓で代謝される一部の睡眠薬や抗不安薬の作用が長引き、眠気やふらつきが強く現れることがあります。
看護師は薬を投与するだけでなく、投与後の薬の効果や副作用を観察する重要な役割を担っています。
「いつもより眠気が強い」「ふらつきが増えた」などの変化が見られた場合には、薬の代謝が変化している可能性も考える必要があります。
また、薬の効き方は肝機能だけで決まるわけではありません。
前述したCYPの誘導・阻害のように、併用薬やサプリメント、食品によっても薬物代謝が変化することがあります。
そのため、看護師は患者さんの肝疾患の有無や検査結果、併用薬などを確認するとともに、薬の投与後に普段と異なる変化がないか観察し、気になる症状があれば医師や薬剤師と情報を共有することが大切です。
ただし、AST・ALTなどの検査値だけで薬物代謝能力を判断できるわけではなく、薬剤ごとの特徴や患者さんの状態を総合的に考える必要があります。



特に食品では、「CYP3A4とグレープフルーツジュース」の組み合わせがよく問題に出ます!また、働き始めてからも度々患者さんから聞かれることがありますので、是非ここで覚えておいてください



グレープフルーツはあまり私も食べませんが、冬はこたつでみかんを食べるのですが、それはどうですか??



その質問は、実際に患者さんからも多くいただく質問です。わかりやすいようにまとめたものがあるので載せときますね!


💡 POINT:看護師が覚えておきたいこと
「いつもと同じ薬・同じ量だから大丈夫」とは限りません!
薬の量が変わっていなくても、患者さんの身体の状態や併用薬が変われば、薬の効き方が変化することがあります。
薬の作用だけでなく、患者さんの状態にも目を向けることが、安全な薬物療法につながります。
CYP(シトクロムP450)とは何者?!
薬物代謝を理解するうえで重要なのが、CYP(シップ)です。
CYPとは、薬物などの代謝に関わる酵素のグループです。
特に肝臓や小腸などに存在し、多くの薬物の代謝に関わっています。
CYPにはいくつもの種類があり、代表的なものにCYP3A4、CYP1A2、CYP2E1、CYP2D6、CYP2C9などがあります。
ここで覚えてほしいのは、CYPの働きが変化すると、薬の血中濃度や作用も変わることがあるという点です。


主な生息地:肝臓、小腸
特技:代謝(第Ⅰ相反応)
仲間:CYP3A4、CYP1A2など
苦手なもの:CYPの働きを阻害するもの
※CYPは単一の酵素ではなく複数の酵素からなるグループです。
CYPが誘導される
CYPの量や働きが増える
↓
薬の代謝が速くなる
↓
薬の血中濃度が低下する場合がある
↓
薬の作用が弱くなる可能性


CYPが阻害される
CYPの働きが抑えられる
↓
薬の代謝が遅くなる
↓
薬が体内に残りやすくなる
↓
薬の作用や副作用が強くなる可能性


それぞれのCYPの主な誘導物質及び阻害物質
| CYP分子種 | 主な誘導物質 | 主な阻害物質 |
|---|---|---|
| CYP1A2 | 喫煙(たばこの煙) リファンピシン | フルボキサミン シプロフロキサシン |
| CYP2C9 | リファンピシン | フルコナゾール ミコナゾール アミオダロン |
| CYP2C19 | リファンピシン フェニトイン | フルボキサミン フルコナゾール オメプラゾール(弱い阻害) |
| CYP2D6 | 臨床的に確立された代表例なし | パロキセチン テルビナフィン ミラベグロン |
| CYP3A4 | リファンピシン カルバマゼピン フェニトイン フェノバルビタール セントジョーンズワート | クラリスロマイシン イトラコナゾール ボリコナゾール グレープフルーツジュース |



たばこによる「CYP1A2」の誘導は「アンサングシンデレラ」という薬剤師の漫画でも内容を取り上げられたことがあるので頭の片隅に覚えておいてください。



CYP3A4は他と比較しても誘導物質や阻害物質の数も多いみたいですけど、それだけ気を付けないといけないのですか?



CYP3A4はCYPの中でも関わる薬が多くて、特に重要な役割を担っています。誘導物質や阻害物質も問われることがあるので、必ず覚えておきましょう!
💡 CYP3A4の誘導:セントジョーンズワート
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、サプリメントなどの健康食品にも使用されるハーブの一種です。
CYP3A4を誘導するため、一部の薬の代謝が速まり、効果が弱くなることがあります。
👉 薬だけでなく、サプリメントとの飲み合わせにも注意!
💡 CYP3A4の阻害:グレープフルーツジュース
グレープフルーツに含まれる成分には、小腸のCYP3A4を阻害する作用があります。
そのため、一部の飲み薬では代謝が抑えられ、血中濃度が上昇して副作用が強く出ることがあります。
👉 ジュースだけでなく、果肉にも注意!
まとめ|薬物代謝を理解すると、薬の効き方が見えてくる!
今回は、ADMEの「M:代謝(Metabolism)」について解説しました。
薬物代謝で特に覚えておきたいポイントは、次の4つです。
- 薬物代謝の中心は肝臓で、薬を体外へ排泄しやすい形に変える役割などがある
- 薬物代謝には第Ⅰ相反応と第Ⅱ相反応がある
- CYP(シトクロムP450)は、多くの薬の代謝に関わる酵素である
- CYPの誘導・阻害や肝機能の変化によって、薬の血中濃度や効果が変わることがある


薬物代謝を理解するうえで大切なのは、単に「肝臓で薬が分解される」と覚えることではありません。
「薬が体内でどのように変化し、それが薬の効果や副作用にどう影響するのか?」を考えることが重要です。
また、臨床では同じ薬・同じ量でも、患者さんの状態によって薬の効き方が変わることがあります。
薬の作用だけでなく、患者さんの肝機能や併用薬、投与後の状態にも目を向けられるようになりましょう!
次回は「E:排泄(Excretion)」!
代謝された薬や、代謝されずに残った薬は、その後どうやって体外へ出ていくのでしょうか?
次回は、腎臓の働きや尿中への薬物排泄の仕組みを中心に、看護で押さえておきたいポイントも解説していきます。
薬の旅は、まだ終わりません!💊






